もう一年近くもずっと復讐のことばかり考えている。映画を見ている時と音楽を聴いている時もご飯を食べている時もずっとずっと仕返ししたくてたまらない。病院の先生は若くて有名な大学に通っているあなたの境遇を羨ましがる人もいると思いますよって言うけどなぜこんな時だけ他人と比べることを勧めるのか。普段は他人と比べるな自分らしくあれと説く大人がなぜ。あいつらに自分が今まで飲んだ睡眠薬を全部一気に飲ませてずっと眠らせてやりたい。僕よりずっと辛くてしんどい人がいるのがわかっていても関係ない。楽になるには死ぬしかない。薬の量が減ったことだけで時間の経過を感じたくない。

病院までの道

病院へ行く途中、旧国道沿いには海に面した公園があった。2人でどこかへ出かける時は大抵この道を通った。何度通っても、どの時間であっても口に出して綺麗だと言っていた。季節は違うが今日みたいな色味と気温がちぐはぐの日に、近くのパン屋さんで沢山パンを買って散歩しに行ったことがある。親を振り切って水面に向かって走る子供、定年してすることが無くなったのか一日中寝転がっていそうな中年男性、家着のような格好で散歩しているカップル、公園内にはたくさんの人がいた。走り回る大小の犬と海をみながらベンチに座ってパンを食べた。載っていたウインナーを落としてしまった僕を見てあの人はどうしようもないな〜という表情で笑っていた。病院の診察室は4畳半ほど、これでもかと罵声を浴びせたあの人の部屋もこれくらいの広さだった。少しでも距離を取るかのように対角線上に座っていた。帰り道も視界の隅に白く光る海が見えただけだった。あの時落としたウインナーは鳥が食べたのか、アリにでも少しずつ食べられてしまったのかとふと思い出した。